秘密の地図を描こう
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アラートが艦内に響き渡っている。
「隊長!」
それに背中を押されるようにパイロット控え室に滑り込みながら、シンはミゲルに呼びかけた。
「気を引き締めていけ」
わかっているな? と彼は言い返してくる。
「それと、逃げ出そうとする地球軍の艦船を見逃すな。ジプリールが乗っている可能性がある」
さらに彼はこう続けた。
「了解です」
こんな戦争、終わらせなければいけないんだ。そのためには、頭をつぶさなければいけない。そう言うことだろう、とシンは判断する。
「こちらが手間取れば、キラ達が危険にさらされる」
そのときだ。アスランのこんなセリフが耳に届く。
「何でキラさん?」
意味がわからない、とシンは聞き返す。
「こちらが大本を叩くと同時に、あちらでは収束器を叩いている。こちらからビームが発射されれば、真っ正面で受ける可能性がある、と言うことだ」
もっとも、そんなことにはならないだろうが……と彼は続けた。
「そうですね。あちらにはアークエンジェルのメンバーだけではなくジュール隊もいますから」
そう言ってきたのはレイだ。
「もっとも……ジャスティスがあればな、とは思うよ」
そうすれば、ミーティアが使える。もちろん、フリーダムも使えるが、一機よりは二機の方がいいのではないか。アスランはそう言ってため息をついた。
「まぁ、今更言っても後の祭りだが」
それにジャスティスは前の対戦で失われている。アスランはそう付け加えた。
「……ニコルが何かやらかしているらしいがな、それに関しては」
詳しいことは聞かされていないが、とミゲルが言ってくる。
「ニコルか」
おそらく、他の機体でもミーティアを使えないかどうか、と試しているのだろう。
「あいつなら暴走しないだろうが……」
できれば、本人には使ってほしくない。そんなことを考えてしまう。
「あちらにはバルトフェルド隊長やクルーゼ元隊長がいらっしゃるからな」
そのあたりではないか。ミゲルがそう言い返してくる。
「……だとすると、クルーゼ隊長だろうな」
可能性が高いのは、とアスランは言い返す。同時に、パイロットスーツの襟元までファスナーをあげた。
「どちらにしろ、俺たちは自分の作戦に集中するだけだ」
それがキラ達の安全を確保することになる。
「そう言うこと。お前も割り切れるようになったな」
いつ、無断で飛び出すか。それを心配していたんだ、とミゲルは笑う。
「そこまで馬鹿ではない。それに、俺以外にもいるだろう?」
その心配がある連中は、とアスランは視線をシンへと向けてくる。
「あんたに言われたくない」
手早く着替えながら、シンは即座にこう言い返す。
「第一、そんなことをしてキラさんに怒られるのはごめんだ!」
彼はそう言うことには厳しいのだ、と怒鳴り返す。
次の瞬間、ミゲルやアスランが複雑な表情を作る。
「あいつも少しは成長したのか?」
「まぁ、それなりにうるさく言ったからな」
アスランの問いかけにミゲルがそう言い返す。
「今はクルーゼ隊長が一緒だし」
そういう点は厳しくチェックされるのだろう。彼はさらに言葉を重ねる。
「あいつの性格ではかなり無理しているような気もするが……」
キラのそばにはラクスたちもいるから大丈夫か、とアスランは結論を出したようだ。
「ともかく、そろそろ出撃しないとな」
時間だ。意識を切り替えろ、とミゲルが言う。
「ここで死んでは意味がないからな」
それは当然のことだ。
「終わったら、キラさんに会いに行けるかな」
シンはこう呟く。
「大丈夫だろう」
即座にレイがささやき返してくる。
「そのためにも、今回ですべてを終わらせるんだ」
彼のこの言葉に、シンはうなずいて見せた。